事業会社のWeb戦略(3) ターゲットとなる顧客を明確にする

市場を分析し、自社の強みや優位性、競合他社の取り組み、顧客の抱える課題や求めているものなどを把握した後におこなう、実際の顧客イメージに近しい人物像の設定についてご紹介させていただきます。

実際の顧客イメージに近しい人物像=ペルソナを作ることで「誰に」「何を」「どのよう」に伝えるのかを明確にすることが出来ます。

今回は顧客像の設定ポイントや、設定するときに役に立つフレームワークなどをご紹介させていただきます。

ターゲットとなる顧客像を明確にする

誤った顧客像を設定しないように注意する

顧客像を具体的に設定することで、誰に何を伝えたいのかを明確にすることができます。しかし、誤ったターゲット像を設定してしまうとマーケティング施策の効果を得る事が難しくなってしまいます。

顧客データ分析による設定が重要

担当者の勘や経験から顧客像を設定するのではなく、データに基づいた顧客像の設定が重要になってきます。まずは顧客像の設定に役立つ顧客データ分析のフレームワークをご紹介させていただきます。

顧客データ分析に役立つフレームワーク

1.セグメンテーション分析

セグメンテーション分析は、顧客や市場を同じ性質や特徴やニーズをもつグループに分類し細分化するときに使用します。

自社商品やサービスの対象となる市場や顧客を絞り込むことで、効果的なプロモーション施策の立案や営業戦略をたてることが出来るようになります。細分化するときの分類として、代表的な4つの方法をご紹介いたします。

地理的変数(ジオグラフィック変数)

地域や気候、文化や宗教などの地理的条件で分類します。分け方には以下のようなものがあります。

地方:北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州

人口密度:都心部・郊外、人口〇○万人以上・以下

気候:積雪量、気温

人口動態変数(デモグラフィック変数)

年齢や性別、学歴や所得、家族構成などの個人の属性で分類します。分け方には以下のようなものがあります。

年齢:20歳未満・20歳代・30歳代・40歳代・50歳代・60歳以上

性別:男性・女性

所得:年収300万円未満・300~399万円・400~499万円・500万円以上

家族構成:独身・未婚の同居・既婚子供なし・既婚子供あり

心理的変数(サイコグラフィック変数)

趣味や嗜好、価値観やライフスタイルなど個人の感情や思考で分類します。分け方には以下のようなものがあります。

性格:社交的・内向的

志向:健康志向・経済志向・安全志向・高級志向

趣味:スポーツ・音楽・読書・芸術・ゲーム

行動学的属性(ビヘイビアル)

購買履歴や使用状況、商品の知識レベルや購入パターンなどの顧客の購買行動で分類します。分け方には以下のようなものがあります。

購買履歴:新規客・リピート客・非会員・会員

購入経路:ネットショップ・店舗

購入頻度:1回・2回・3回以上・定期購入

2.RFM分析

RFM分析は顧客の購買行動のうち、最終の購入日・購入頻度・購入金額を使用し分類する手法です。

これにより購入頻度が多く購入頻度も多い優良顧客や、最終購入日から日数が経っている休眠顧客など、顧客ごとのアプローチの方法を明確にすることができます。

最終購入日:Recency

最後に購入した日を算出します。最終購入日からの日数が短いほど評価が高く、長いほど低くなります。

購入頻度:Frequency

何回購入したのか、回数を算出します。購入回数が多いほど評価は高く、少ないほど低くなります。

累計購入金額:Monetary

これまでの累計購入金額を算出します。累計購入金額が高いほど評価は高く、少ない程低くなります。

RFM分析のカテゴリー分けの例

顧客カテゴリー 最終購入日 購入頻度 累計購入額
Aランク 1週間以内 15回以上 10万円以上
Bランク 1ヵ月以内 10回以上 7万円以上
Cランク 3か月以内 5回以上 4万円以上
Dランク 6か月以内 2回以上 1万円以上
Dランク 6か月より前 1回 1万円以下

stp分析

3.デシル分析

デシル分析では、まず顧客を購入金額の順に並び替え、それを均等に10等分します。

たとえば顧客数が100人の場合、購入金額の高い順に10人ずつ10グループ作ります。
各グループの合計購入金額や、売上構成比率、平均購入金額などの算出することで、各グループの売上貢献度などを把握することが出来ます。

デシル分析のカテゴリー分けの例

人数 平均購入金額 売上構成比率 平均単価
合計 100 1,000,000 100% 10,000
デシル1 10 320,000 32% 32,000
デシル2 10 180,000 18% 18,000
デシル3 10 110,000 11% 11,000
デシル4 10 90,000 9% 9,000
デシル5 10 85,000 8.5% 8,500
デシル6 10 65,000 6.5% 6,500
デシル7 10 50,000 5% 5,000
デシル8 10 40,000 4% 4,000
デシル9 10 35,000 3.5% 3,500
デシル10 10 25,000 2.5% 2,500

上記の場合、上位20名の顧客が売上の50%を作っていることになっています。このように、売上構成の高いグループを把握することでマーケティング施策の対象を定めたり、平均購入単価を把握することで単価アップの取り組みを考えたりすることが出来ます。

4.LTV分析

LTVとはライフ・タイム・バリュー(顧客生涯価値)を意味し、自社が顧客から生涯でどれだけの収益を得る事が出来るのかを表す指標として使われます。

LIVの計算方法

LTVの計算方法は複数ありますが、今回は代表的ないくつかのパターンをご紹介させていただきます。

年間取引額からの算出

LTV=年間取引額×収益率×継続年数

年間取引額20万円、収益率80%、継続年数2年の場合、LTV=20万円×80%×2=32万円となります。

平均単価と購入頻度で算出

LTV=平均顧客単価×収益率×購入頻度

顧客単価1,100、収益率90%、月2回を10年間継続の場合、LTV=0.11万円×90%×240回(2回/月×12か月×10年)=23.76万円となります。

売上高・原価・購入者数で計算

LTV=(売上高―売上原価)÷購入者数

売上高1000万円、原価率25%、購入者数60人の場合、LTV=(1000万円-原価250万円)-60人=12.5万円

5.バスケット分析

バスケット分析はレジのPOSデータやECサイトの購入履歴をもとに分析する手法となり、同時購入されやすい商品を分析することが出来ます。

バスケット分析の主な指標は以下の通りです

支持度(支持率)

購入者全体のうち、商品Aと商品Bが一緒に購入されている割合を表します。同時購入者数を全体購入者数で割ることで算出できます。同時購入される確率がわかります。

支持度=同時購入者数÷全購入者数

たとえば、1日の販売者数500人、チーズバーガーとポテトセットを購入した人数が90人だった場合、チーズバーガーセットの支持度は90人÷500人=18%となります。

信頼度(併売率)

商品Aを買った人のうち、商品Aと商品Bを同時購入した人の割合をあらわします。同時購入者数を商品Aの購入者数で割ることで算出できます。一方の商品の購入者がもう一方の商品を同時購入する確率が分かります。

信頼度=同時購入者数÷商品Aの購入者数

たとえば、1日の販売者数500人、チーズバーガーとポテトセットを購入した人数が90人。内訳にチーズバーガーは100人が購入し、ポテトは400人が購入していた場合は以下の通りです。

チーズバーガーの信頼度は90人÷100人=90%となり、多くの方が同時購入しています。

ポテトの信頼度は90人÷400人=22.5%となり、あまり高い割合ではありません。

期待信頼度

商品Aが全体の購入に対してどの程度の割合で購入されているかをあらわします。商品Aの購入者数を全体購入者数で割ることで算出できます。商品Aの人気そのものを把握することができます。

期待信頼度=商品Aの購入者数÷全購入者数

たとえば、1日の販売者数500人、チーズバーガーとポテトセットを購入した人数が90人。内訳にチーズバーガーは100人が購入し、ポテトは400人が購入していた場合は以下の通りです。

チーズバーガーの期待信頼度は100人÷500人=20%です。

ポテトの期待信頼度は400人÷500人=80%となり、人気商品といえます。

リフト値

一方の商品がもう一方の商品を購入する割合(信頼度)に対して、商品Aを購入する割合(期待信頼度)がどの程度あるのかを求めるリフト値は、セット購入されやすいかどうかを把握することが出来ます。

リフト値の目安として、1以下であれば関係性は弱く、1以上であれば関係性があり、2以上になると関係性は強いと言えます。つまり、リフト値が高ければ高いほど、セット購入される可能性が高いと言えます。

リフト値=信頼度÷期待信頼度

たとえば、1日の販売者数500人、チーズバーガーとポテトセットを購入した人数が90人。内訳にチーズバーガーは100人が購入し、ポテトは400人が購入していた場合は以下の通りです。

チーズバーガーのリフト値は90%÷20%=4.5でありとても高い。

ポテトのリフト値は100人÷500人=0.28と低い。

6.行動トレンド分析

行動トレンド分析とは、特定の期間(シーズン)に商品を購入する傾向があるかどうかを分析する手法です。代表的なものとして、アイスクリームや水着は夏に売れ、ヒーターやおせちは冬に売れます。

シーズンは季節や月などの長い期間のものから、週末などの曜日や18時~22時などの時間などによっても変動する商品やサービスもあります。

また、顧客層も年齢や性別、居住地域や家族構成によっても偏りが出る場合があります。

ペルソナを設定する

顧客データ分析をおこなった後、それらをふまえて具体的な顧客像(ペルソナ)を設定していきます。ペルソナで設定する人物像は具体的に細かく設定することが重要です。

先入観・思い込み・希望的観測に注意する

担当者の先入観など、誤った設定にならないように気を付ける必要があります。

男性だから。女性だから。自分のときはこうだったから。など、担当者の意見が入らないように気を付けなければなりません。誤ったペルソナは購買行動にも誤りが出てくるため、施策の成果に直結してしまいます。

データ分析によって得られる客観的なデータを正しく取り扱う。ペルソナと近しい年齢や性別の人物の意見を取り入れるなどの取り組みも重要になってきます。

具体的な人物像にする

例えば大阪府在住の35歳男性。ではなく、大阪府大阪市在住、既婚で3歳の子供がいる3人家族でマンションの持ち家。非上場の食品メーカーの営業職で主任を務めており年収は500万円。残業は比較的少なめで趣味はスポーツ観戦で休日は家族と過ごすことが多い。さらにより具体的に性格や交友関係などを設定する場合もあります。

定期的に見直す

時代によって価値観や行動が変わってくるためペルソナは定期的に見直すことが重要です。 たとえば情報収集の方法は、書籍からパソコンへ、パソコンからスマートフォンへと移行し、連絡手段も固定電話・ポケットベル・携帯電話・メール・SNSと変化してきています。

顧客データの分析にあわせてペルソナも時代にあわせて見直すことが大切です。

ペルソナの購買行動や思考を考える

ペルソナを設計したら、商品・サービスを欲しいと感じた時から購入までの一連の購買行動をシミュレートします。

また、その時々の思考や、企業広告や情報発信メディアとの接点(タッチポイント)もあわせて明確にしておくと、プロモーションプランの立案に役立ちます。

まとめ:客観的なデータで顧客像をつく

ターゲット像となるペルソナの設計は、先入観や思い込みが入ってしまいがちです。

フレームワークの活用や、既存の顧客データを分析などによって、客観的につくりあげることがとても大切です。また、時間が経つにつれ、環境や常識は変化します。それらに合わせるように定期的な見直しをおこなうことも大切です。

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