不動産競合市場の競争地位別戦略でみるWEBマーケティング戦略
不動産会社のWEBマーケティング/SEO対策(家を買う)
仲介物件が商品の不動産購入市場では、独自で物件情報の変更ができないため、商品の性能や価格は企業ごとに差を設けることがあまり出来ません。商品の差別化戦略が難しい不動産の購入市場においてWEBマーケティングの戦略を考えるとき、コトラーが提唱した競争地位別戦略も参考になります。
もくじ
競争地位戦略とは?
経営資源の観点から自社を把握し基本戦略を定める方法
市場シェアと経営資源によって企業を分類し、分類ごとにマーケティング戦略の定石を定めたものがコトラーの提唱した競争地位戦略です。事業規模・市場シェアごとに強みや弱みといった特徴を理解し、適切な競争戦略の選択を目的とした理論です。
市場シェアによって4つの競争地位に分類する
コトラーの競争地位別戦略では、市場シェアによって企業を4つのカテゴリーに分類することからはじめます。その4つのカテゴリーは以下の通りです。
リーダー(Market Leader)
業界のトップシェアを持つ企業です。
チャレンジャー(Market Challenger)
リーダーを追従する2番手・3番手グループに属する業界大手と呼ばれる企業です。
フォロワー(Market Follower)
シェア率が低く、知名度も低いリーダーを狙うことはまだむつかしい企業です。
ニッチャー(Market Nicher)
地域密着や特定の商品やサービスなど、限定的な市場では知名度がある企業です。
競争地位ごとの経営資源の特徴とは?
経営資源には量的経営資源とし質的経営資源にわけることができます。
量的経営資源
ヒト・モノ・カネなど具体的に数値化でき、企業の規模を示す資源を指します。たとえば資本・従業員数・店舗数・設備の規模・生産数などが該当します。
質的経営資源
知名度や信用度など簡単に数値化できないが差別化の要因となる資源を指します。たとえばブランド力・対外信用力・技術力・ノウハウ・専門性・マーケティング力などが該当します。
4つの競争地位と経営資源について
量的経営資源と質的経営資源は、4つのカテゴリーごとに特徴があります。コトラーの競争地位別戦略における経営資源の図式は以下のようになります。

上記分類が基本となりますが、実際のところチャレンジャーは知名度や信用度などの質的経営資源がニッチャーに劣らないことがあります。また、ニッチャーがない市場やニッチャーの中での格差が大きく知名度などに差がある場合もあります。
実際に分析する際は、市場や業界ごとに考える必要があります。今回は不動産の売買市場における各企業の分類から、それぞれの競争地位の特徴やWEB戦略の取り組み方についてご紹介させていただきます。
競争地位ごとの特徴について
リーダー
量的経営資源:全国に数百店舗・数千人の従業員を抱える豊富な資源と広告宣伝費があります
質的経営資源:TV-CMなどで認知度が高く、技術力やノウハウもあり、こちらも資源が豊富にあるといえます。
チャレンジャー
量的経営資源:多くの全国展開している企業があり、数千人の従業員を抱える企業も少なくありません。
質的経営資源:コトラーの競争地位別戦略では「少ない」に分類されます。リーダーと比較すると劣るかもしれませんが、フォロワーやニッチャーに比べると知名度・ブランド力・技術力・ノウハウは豊富にあるといえます。
ニッチャー
量的経営資源:店舗数や従業員数など事業規模が全国展開しているリーダーやチャレンジャーには劣るケースが多々あります。
質的経営資源:都道府県限定で展開している企業や特定のサービスに特化した企業は、その市場においてはリーダーやチャレンジャーに負けない資源を持っています。
フォロワー
量的経営資源:不動産業界は参入障壁が低いため、1店舗のみの企業もたくさんあります。ただ、特定の沿線の数駅に展開するなど局所的に集中させている場合もあります。
質的経営資源:知名度がない企業も多くそれでも集客が可能なため、資源は少ないといえます。
競争地位ごとの「家を買う」のWEBマーケティング戦略の考え方
資金力や人的リソースに差があるため、それぞれのカテゴリーごとにWEBマーケティングの取り組みの考え方には違いがあります。ここでは、競争地位ごとのWEBマーケティングのポイントと施策別の方向性について簡単にご紹介させていただきます。
リーダー・チャレンジャーのWEB戦略設計
デベロッパーのグループ会社や一部の電鉄グループ会社の不動産仲介会社が属するリーダー・チャレンジャー企業は同様の施策方針をとられています。成熟した「マイホーム購入市場」での大きな市場拡大は難しいことから、既存シェアの維持・拡大がWEBマーケティングのポイントになります。
● WEBマーケティングのポイント
最も大きな競合企業はポータルサイトであり、ポータルサイトを通して多くのフォロワーがシェアを獲得しているため、シェア拡大には多額の広告コストを投下できるポータルサイトに対抗する広告費配分の最適化がとても重要になります。
また、不動産売却や法人向けサービス、デベロップメントや新築請負、リフォーム、リノベーションなどグループ会社各社の事業とのデータ連携・施策連動の最適化や、成約済み顧客に対しての継続的な関係の維持とライフステージごとのサービス提供を個別に実施するために、顧客データに基づいたワントゥワンマーケティングの最適化も重要なポイントになります。
● WEBサイト施策
大規模な物件検索サイトの構築にあたり、まずは最善のサイト構造設計やページ表示速度、内部リンク設計など「Googleの検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイドに準拠することが必須となります。
そのうえで、都道府県ごとのエリア検索に対応したSEO対策の実施、掲載終了物件に対する対策、売り出しなしの物件名検索に対する対策、ニッチな複合検索に対する対策など、大規模サイトのスケールメリットの評価を細部にもいきわたるようなSEO対策が効果的になります。
Googleの検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド
https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/seo-starter-guide?hl=ja」
● WEB広告
不動産購入の関連検索キーワードは多岐にわたり、なおかつポータルサイトや地域ごとにフォロワー企業が出向しているため、CPAが簡単に高くなってしまいます。また、流通物件が毎年変動する特性上、昨年度のデータがあてはまらないケースが多く、運用難易度は他の業種と比べてとても難しくなります。
● その他のWEBチャネル
ユーザーの囲い込みのための会員コンテンツやメルマガ配信はサイトへの直接訪問の増加施策としてとても有効です。SNSに関しては、高額商品であることや掲載終了物件の取り扱いなどの特性上、直接反響につながる取り組みにはなりにくいものの、ブランディングや風評被害対策としては一定の効果があり、媒体を絞って各社運用されています。
● 成約顧客との関係づくり(CRM)
年間成約件数が数千~数万ある大手企業においては、新規顧客獲得と同じくらい成約済み顧客の紹介や再販は重要となります。
ニッチャーのWEB戦略設計
特定の地域で多店舗展開している地場の大手不動産仲介会社や私鉄系の鉄道グループ会社などのニッチャー企業は、リーダーやチャレンジャーやポータルサイトほどの資金力がないため、投資先を選びリソースを集中させることがWEBマーケティングのポイントになります。
● WEBマーケティングのポイント
特定の地域によっては上位シェアグループと同程度かそれに近しい認知度を獲得している場合があります。しかし、かけられるコストには差があるため集中型マーケティング戦略のような市場や施策を絞り、経営資源を集中投下する取り組みが重要になります。
また、リーダー・チャレンジャーと異なりポータルサイトを併用し、集客の軸を自社サイトと併用している企業も多数あるかと思いますが、その場合は全体的な広告費の出費増とならないように調整が必要となります。
● WEBサイト施策
リーダー・チャレンジャーと同様に多くの企業が大規模システムサイトとなっています。しかし、ポータルサイトやリーダー・チャレンジャーよりも商圏エリアが狭く掲載物件総数も少ないため、必然的に総ページ数は劣ってしまいます。スケールメリットが劣る中で都道府県名を含む検索キーワードで上位表示させるためには、対象となる都道府県に特化した専門性を認識させることがSEO対策では重要になります。
1点、東京・名古屋・大阪など離れた都道府県に出店している場合、経験上そのすべてで検索上位表示させることはとても難しくなります。離れた都道府県の場合、検索対策に工夫が必要かと思います。
● WEB広告
繁忙期にポータルサイトや上位シェアグループの出向額が増加するため、急なCPCの増加やインプレッションの減少などが起こりえます。また、買い関連の検索キーワードは多岐にわたり検索キーワードごとに反響確度が大きくことなるうえ、フレーズ一致であっても反響の見込みがないキーワードで出てしまうことがあるため注意が必要です。
● その他のWEBチャネル
オウンドメディアの運用、SNSの運用、直接訪問につながるメルマガ配信や会員コンテンツの運用など、サービスサイトのSEO対策や広告以外の集客チャネルは多岐にわたりますが、いずれも人的コストや開発・運用コストが発生します。自社の認知度やエリア内のシェア状況などにあわせて取捨選択したうえで、施策を連動させた
マーケティングプランが重要になります。また地域によっては屋外広告やチラシなどがまだまだ強い地域もあるため、オンラインとオフラインをつなぐO2Oの戦略施系がポイントになるエリアもあります。
● 成約顧客との関係づくり(CRM)
不動産売買の再販機会が20年後、30年後となるケースもあるため、ニッチャー企業の成約顧客に対する取り組みの重要度は規模やリフォームなどの事業展開の有無、担当部門の有無などによってことなります。
フォロワーのWEB戦略設計
不動産会社は年々増加しており、他業種に比べて初期費用・ランニングコストがおさえられる点や、不動産フランチャイズ企業も多いことから独立開業のハードルも低くなっています。そのため、フォロワーに該当する企業は年々増加していると考えられます。
● WEBマーケティングのポイント
フランチャイズの加盟店となった場合、ブランド力の信用度や認知度を利用することができるほか、顧客管理システムや物件管理システムなどを利用することもできます。また、集客面においてもサポートを受られますが、多くの場合自社サイトとポータル掲載による2軸の集客チャネルを持たれています。
独立系の場合、多くはポータルサイト掲載による集客が主となるかと思います。また、各種管理ツールやマーケティングツールは、数多くの不動産テック企業が様々なツールを開発しているため、自社の規模や目的にあわせて選択されているケースが多々見受けられます。
● WEBサイト施策
WEBサイトからの獲得は容易ではありません。購入関連キーワードで上位表示されている企業は、ポータルサイト・財閥系企業・地場大手企業・電鉄系企業のような順となっていることが多く、スケールメリットや集客力のあるそれらの大規模サイトに対抗するには、しっかりとしたSEO対策の実装および継続的な改善運用が必須となります。
● WEB広告
WEBサイト同様に反響や売り上げにつながる成果を上げることは容易ではありません。投資額の多いポータルサイトや大手企業が多数いる中で、獲得単価を上げ続けることはとても難しい作業となります。
● その他のWEBチャネル
量的経営資源・質的経営資源のどちらもリーダー・チャレンジャー・フォロワーに対抗できない状況において、SNSを活用した時間と労力をかけた施策やポータルサイトのブランド力・集客力を利用するためにコストをかけた集客施策がもっとも効率的で効果的な場合がよくあります。
● 成約顧客との関係づくり(CRM)
個人的にはとても重要だと考えています。フォロワー企業はひとりひとりのお客様としっかりと向き合うことが可能です。そのため、高い顧客満足度の接客サービスが実践し顧客が満足いく取引ができたのであれば、成約後も忘れさせないために継続してコンタクトを取り続けることで、リピートや別サービスの相談や知人・友人の紹介などもゼロではありません。
「よくしてもらったら、何かで返したいとおもう心理的傾向」は返報性(へんぽうせい)の原理と呼ばれており、一生に一度のマイホーム購入というイベントの成功経験は「よくしてもらった経験」として相手に残っているものです。そのため、薄く長いお付き合いを続けられるかどうかがポイントになります。
まとめ:不動産競合市場の競争地位別戦略について
今回は市場分析の一つとなる競争地位別戦略をガイドラインとして、不動産の購入市場における競争地位ごとのWEB戦略設計の考え方についてご紹介させていただきました。
実際の事業規模や商圏エリアなどはSTP分析でさらに細かく分類することができますが、広告費・販促費などのコスト配分や人的リソースの最適化を考える場合は競争地位別戦略の考え方も参考になります。さらに、地域密着のフォロワー企業はランカスター戦略などのフレームワークも参考になります。
市場分析による現状調査もお気軽にご相談ください。

